導入背景
グランドマスタークロックの導入背景を教えてください。
私は、今、 Beyond5GやPrivate5Gと呼ばれる、5Gの次の世代におけるネットワーク運用のありかたを研究課題としています。利用者ごとにタイムスロットが設定されていく想定の中で、 遅延制約が厳しいアプリケーションを動かしていくことを想定すべきなのですが、実ネットワークにおいて遅延の揺らぎがどの程度であり、それがどの程度の影響を与えるのかについて、十分把握できているとは言い難い状況です。そこでローカル5Gの環境で遅延の揺らぎがどの程度のものであるのか、Wi-Fiと比べて本当に少なくなっているのかを確認し、将来的により遅延制約の厳しいユースケースでも利用可能なネットワークを提供できるよう貢献したいと考えています。PTPでの実験はまさにそのために必要と考えています。
導入製品: https://infocom.haradacorp.co.jp/time-synchronization/gm200
グランドマスタークロックはPTPでの実験で必要と考えられたのですか。
はい。5Gネットワークでは内部的にPTPが用いられていますが、それはあくまでネットワーク構築・管理運用のためであり、5Gネットワークの利用者の利用者が使用することを想定したものではありません。(管理用のものを流用できれば一番よかったのですが、)利用者によるネットワーク品質評価のため、5Gネットワークの中に、利用者が利用可能なPTPサーバ製品、可能であればGNSSと同期するグランドマスタークロックが欲しい、と思っていました。一方で、完全に自作で進めると評価の客観性に欠けてくることも懸念していて、既に製品化されているグランドマスタークロックというのはある意味客観性のあるベンチマークの1つになるだろうと考えました。
決め手 原田産業を選択した理由
グランドマスタークロックで原田産業のGM200を選ばれた理由は何ですか。
実は、私はグランドマスタークロックのメーカーにこだわりはありませんでした。ただ、NTPではなく、あくまでもPTPグランドマスタークロックでした。貴社製品を選択した理由を挙げるなら3つあります。1番目は、値段が手頃であったことです。2番目は、商品Webサイト上に公におおよその価格が提示されていたことです。価格レンジが分からない状況では予算立てがしにくいところなのですが、貴社では一式で金額感が出ていたので、予算申請がしやすかったです。3番目は、大きさがコンパクトだったことです。本学内でも5Gシステムの設置箇所は複数あり、そこに持ち込んでの評価を想定するとグランドマスタークロックを都度移動する必要も出てくるので、コンパクトなのはよかったです。アンテナキットを購入したのも、同じ理由です。
GM200を実際に導入してみていかがでしたか。
設定が分かりやすく、大変使いやすい機材であると感じています。取扱説明書・クイックガイドの内容はよく理解できて読み返す必要は感じませんでした。また、思っていた以上にコンパクトです。(高さ:1U、幅:ハーフU)
効果
目的に合っていましたか。
はい。まずやってみたいなと思っていたのが、PTPを用いた、Wi-Fi無線区間の片道伝送遅延とその揺らぎの測定でした。Wi-Fi AP(親機、基地局)側にGM200を有線接続し、Wi-Fi STA(子機、端末)にノートPC (Linux機)を有線接続し、ハードウェアタイムスタンプ対応のPTPソフトウェアであるptp4lを用いて測定しました。無線区間および接続する有線区間をいくつかのパターンで構成し、各パターンでの片道伝送遅延とその揺らぎをGM200によって高精度に測定できました。
今後の取り組み内容と期待
今後の検証予定を教えてください。
ローカル5GシステムにGM200を組み込み、利用者観点からの、ローカル5Gネットワークの伝送遅延やその揺らぎの高精度な測定ができるようにしてみたいと考えています。
次世代の無線ネットワークには利用者やアプリケーションごとにこれまで以上に細分化されたタイムスロットの設定がなされていくのかなと思っています。その際、そのネットワークでので遅延の揺らぎは本当に少なくなっていくかを確認し、遅延制約が厳しいアプリケーションも確実に動かせる、より効率的なネットワークの提供に少しでも貢献できればと思っています。
今後、私共の製品に期待することはありますか。
誤解を恐れず申し上げると、私は5Gには半分懐疑的です。実際にネットワークを導入した結果、どの程度の性能のものが得られたのか、しっかり自分で測定し、納得できるようにしておきたいと思っています。その助けになるような製品の提供をグランドマスタークロックに限らず貴社に期待したいです。
本日はどうもありがとうございました。
【 参考 】実際の様子(GM200検証)
長時間の安定性をみるため、窓の傍に設置(1週間)結果、安定性に問題なし。
室内・窓を閉めていた状態ながら、衛星情報を確保。
GM200
導入製品: https://infocom.haradacorp.co.jp/time-synchronization/gm200
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